2026年9月、ドイツのヴィトラ・デザイン・ミュージアムで「ジェフリー・バワ展」が開幕しました。ありがたいことにオープニングにご招待いただき、スイスのバーゼルを訪れました。展覧会の見どころと、バーゼルからヴィトラへの行き方をご紹介します。
この記事でわかること
- ヴィトラ・キャンパスとヴィトラ・デザイン・ミュージアムとは
- ジェフリー・バワ展「Architecture for the Senses」の会期と見どころ
- バワの家具とトロピカル・モダニズム
- バーゼルからヴィトラへの行き方と、旅の注意点
お恥ずかしいことに、「バーゼルってどこ?」「ヴィトラって何?」というところから始まった旅でしたが、私自身のスリランカとの歩みを振り返る、とても良い機会になりました。
エナ・デ・シルバ展から始まったご縁
KSTCは、2024年11月に東京・四谷のアートコンプレックスセンターで開かれた「エナ・デ・シルバ展」に実行委員会として参加し、エナ・デ・シルバ財団との交渉など、渉外を担当させていただきました。
その後もご縁が続き、2025年にベルリンの世界文化の家(HKW)で開かれた展覧会「ムサフィリ(Musafiri: Of Travellers and Guests)」にも足を運びました。エナの作品が出品された展覧会で、ご一緒したのは、エナ・デ・シルバ財団のトラスティーで、スリランカの建築家でもあるアミラ・デ・メルさんです。

今年8月、コロンボでアミラさんにお会いしたとき、「次はバーゼルのヴィトラで、ジェフリー・バワ展があるわよ!」と教えていただき、オープニングにお招きいただきました。
ヴィトラとは? 建築とデザインの聖地
ヴィトラは、イームズの椅子などで知られるスイスの家具メーカーです。バーゼルから国境を越えてすぐ、ドイツのヴァイル・アム・ラインにある「ヴィトラ・キャンパス」には、フランク・ゲーリー、ザハ・ハディド、安藤忠雄、アルヴァロ・シザ、SANAA、ヘルツォーク&ド・ムーロンといった、世界的な建築家の建物が並びます。そのため、建築とデザインの聖地として、世界中から人が訪れます。
キャンパスの中にあるヴィトラ・デザイン・ミュージアムは、フランク・ゲーリーの設計です。デザインや建築の大規模な特別展で知られ、その展示は世界から注目を集めています。


ジェフリー・バワ展「Architecture for the Senses」の見どころ
今回の展覧会は「Geoffrey Bawa: Architecture for the Senses(感覚のための建築)」。会期は2026年9月26日から2027年2月28日までです。香港の美術館 M+ と共同で企画され、ジェフリー・バワ・トラストが協力しています。
オープニングトークで伺った話では、ヴィトラのスタッフがたまたま訪れたスリランカで、偶然バワの建築に出会ったことが、この展覧会の始まりだったそうです。
トークの会場は、キャンパスにあるザハ・ハディド設計の消防署。登壇したのは、ジェフリー・バワ・トラスト理事長のチャンナ・ダスワッテさん、同トラストで本展の共同キュレーターを務めるシャヤリ・デ・シルバさん、そして M+ のミュージアム・ディレクターでありスリランカにもルーツのあるスハンニャ・ラフェルさん、共同キュレーターの横山いくこさんなど、錚々たる顔ぶれです。会場は満員で、到着が遅れた私たちは立ち見での参加になりました(遅れた理由は、後ほど……)。



展示では、バワが手がけた建築の写真やドローイング、精巧な模型はもちろん、当時のスリランカの政治や経済の状況、そしてバワとともに活躍したアーティストたちにも光が当てられています。バワだけでなく、スリランカの歴史と文化の歩みをたどる、充実した内容でした。


ファントムハンズの家具が語る、トロピカル・モダニズムの原点
会場には、南インド・バンガロールの家具ブランド、ファントムハンズがバワ・トラストとともに復刻した家具も、数多く並んでいました。
バワ建築を彩る家具には、ヨーロッパの名作を真似たものが多い、という少し批判めいた声を聞いたこともあります。けれども実際には、ヨーロッパから家具を輸入したくてもできなかった、当時のスリランカの事情がありました。そこから生まれたのが、地元の素材と職人の手でつくる、地産地消のデザインです。
そこには、トロピカル・モダニズム、熱帯建築という、バワが切り開いた分野につながる大切なヒントが隠されていました。
『地球の歩き方』から20年、私とバワ
スリランカの観光の仕事に携わって、早20年になります。
日本の旅行者のあいだでジェフリー・バワが注目されるようになったきっかけのひとつが、『地球の歩き方』スリランカ編の2003〜04年版でした。バワの建築に惚れ込んだ担当者が、「熱帯建築の天才ジェフリー・バワの世界」と題して、巻頭特集を組んだのです。

ちょうど2004年からスリランカに関わり始めた私にとって、バワの建築は、すでに見逃せないスリランカの魅力のひとつでした。ヴィトラがバワを「発見」したのも、つい最近のことのようです。当時の担当者の先見の明と、それを数ページにわたる巻頭特集にまとめた編集者の手腕に、あらためて驚かされます。
その後、バワとともに活躍したラキ・セナナヤケ、バーバラ・サンソーニ、エナ・デ・シルバという3人のアーティストに注目し、旅行会社のウェブサイトで紹介したり、メディアの取材でご提案したりしてきました。そうした積み重ねの先に、ご縁をいただいたのが、2024年のエナ・デ・シルバ展でした。
今回のヴィトラの展覧会では、この3人の仕事にもあらためて光が当てられていました。展示室を歩きながら、スリランカと出会ってからの20年を、静かに振り返る時間にもなりました。
バーゼルからヴィトラへの行き方

空港の出口は「スイス側」へ
バーゼルの空港(ユーロエアポート)は、フランスの領土にあり、スイスとフランス、ドイツの3か国で使われています。到着すると、フランス側とスイス側の出口があり、「どちらから出ればいいの!?」と迷うことに。バーゼルに泊まるなら、スイス側の出口です。
電源プラグに注意
はじめてのスイス。無事にバーゼルの宿に着いたのも束の間、手持ちのヨーロッパ用のプラグが、コンセントに差さらないことが発覚しました。スイスのコンセントは、1950年代から続く独自の3本ピンの形。なかには、四角いプレートに小さな穴が9つ、花のように並ぶ3口のコンセントもあり、そのデザインはとても美しいのですが……。まずは電気屋さんへ駆け込みました。
スイスのプラグとコンセントの移り変わりは、オランダのウェブ博物館(Museum of Plugs and Sockets、英語)で見ることができます。

ヴィトラへ向かう途中の電気屋さんには、私たちと同じような人が多いのか、変換プラグが山積みに。スイスへ行くなら、変換プラグは日本で用意していくのがおすすめです。
バス・電車で行く
ヴィトラ・キャンパスがあるのは、ドイツ南部の小さな町。訪れるなら、バーゼルに泊まるのが断然おすすめです。


- バス:バーゼル・バーディッシャー駅から55番のバスで約15分、「Vitra」下車。本数はそれほど多くないので、時刻を事前に調べておきましょう
- 電車・トラム:バーディッシャー駅から電車で1駅、またはトラム8番で、ヴァイル・アム・ライン駅へ。駅からキャンパスまでは歩いて約15分です
- タクシー:約10分、25〜30ユーロほど(ヴィトラ公式サイトの目安)
2026年10月確認。最新の情報はヴィトラの公式サイト(英語)でご確認ください。
Uber・Bolt は過信しないで
変換プラグを手に入れて、いざヴィトラへ。ところが、バーゼルからドイツ側に入った途端、Uber がまったく捕まりません。Bolt に至っては対応地域外。結局、2km近くを歩くはめになり、オープニングトークに遅れてしまったのです。
Uber や Bolt は、バーゼル市内では比較的捕まりますが、ヴィトラ・キャンパスからはほとんど捕まりません。帰りの足も含めて、余裕を持ったスケジュールにしましょう。
次回は、ヴィトラ・キャンパスツアーへ
ヴィトラ・キャンパスを訪れたら、ぜひ参加してほしいのがキャンパスツアーです。こちらは次の記事でご紹介します。
建築をテーマにした旅や、スリランカでバワの建築を巡る旅も、オーダーメイドでご提案しています。お気軽にご相談ください。
展覧会の情報(2026年10月確認)
- 展覧会名:Geoffrey Bawa: Architecture for the Senses
- 会期:2026年9月26日〜2027年2月28日
- 会場:ヴィトラ・デザイン・ミュージアム(ドイツ・ヴァイル・アム・ライン)
- 開館時間:毎日 10:00〜18:00
- 展覧会の公式ページ(英語)
スリランカの旅は、専門ブランドのヤートラトラベルズでもご案内しています。スリランカの紅茶の旅については「AMBA茶園で、自分の手で紅茶をつくる」もご覧ください。
